食べ物

神津は島だから、当たり前ですが海の幸は豊富です。
けど、それ以外にも食べ物の名物はあります。
たとえばこれ。

これは神津島で唯一本格的な蕎麦屋、まいとりぃさんの三色蕎麦です。
左から明日葉、けしの実、せいろ蕎麦になっています。
この三色蕎麦がテーブルに置かれた瞬間、まず目に付くのはけしの実蕎麦でしょう!
名前の通りけしの実が練りこまれているわけですが、白く透明感のある麺に、
黒い点がぽつんぽつんと浮いて、まるで白魚かと見紛ってしまいます。
喉越しもよく、ほのかに香るけしの匂いが程よいアクセントになっています。


右にあるのがせいろ蕎麦。オーソドックスですが、それだけに蕎麦の美味さを
突き詰めています。蕎麦通ならばおもわず唸ってしまうのではないでしょうか。


そして左が明日葉蕎麦。緑色なので、一瞬茶蕎麦かと思ってしまいますが違います。
明日葉というのは伊豆諸島の特産物で、今日収穫しても明日には芽が吹き出ていると
いうのが由来です。実際はそこまでは成長は早くありません。
とはいえ、強靭な生命力を備え、栄養が抜群なのは確か。
カルコンという成分が豊富で、抗癌作用も優秀なのだそうです。
神津の明日葉は、伊豆諸島の明日葉の中でも特にカルコン含有量が高いのだといいます。


かつて秦の始皇帝が不老長寿の薬を捜し求めた際に、徐福という男を日本に派遣しました。
徐福が目指したのは蓬莱山。中国の東の海にあるという仙人の住む山です。
そこで徐福が見つけたのがこの明日葉だといいます。
とはいえ、日本に薬を探すために派遣されたという徐福は結局中国に戻ることはなかったので、
明日葉が始皇帝の手に渡ることはありませんでした。
明日葉がいくら栄養豊富とはいえ、さすがに不老長寿は無理というものです。
徐福も、不老不死の薬など存在しないことは分かっていたので、
失敗の咎を責められ死刑になるならば、と亡命をするつもりで故郷を発ち、
そのまま八丈島で果てたのだといいます。
徐福が中国に戻らなかったのは、戻れば処刑されるという恐怖もはあったのでしょうが、
伊豆の島々に対して、仙人こそいないものの蓬莱山の幻影を、楽園を見たのではないか、
とそんな気もしてしまうのです。


ちなみに、日本の他の地方にも徐福が果てたとされる地はたくさんあります。
実際には徐福はそんな方々には行っていなかったはずなのですが、
歴史の中で各地の人々が自らの土地と徐福を関連付けていってのでしょう。
まるで水戸黄門か弘法大使ですね。
昔の人々にとってもそれぐらい魅力的な存在だったのかもしれません。